内視鏡検査とバリウム検査の仕組みの違い
バリウム検査(胃部X線検査)で見ているのは、胃そのものではなく「胃の影」です。発泡剤(胃をふくらませる粉薬)で胃を広げ、白い造影剤のバリウムを胃の壁に付着させてX線を当て、内側の凹凸を影として写し取ります。一方の内視鏡検査(胃カメラ)は、小型カメラのついた細い管を口や鼻から入れ、胃の粘膜そのものをのぞき込む検査です。同じ胃の検査でも、見ているものが根本から違います。
バリウム検査は「胃の形を影で見る」検査
検査台の上で体の向きを変えながら、いろいろな角度からX線写真を撮ります。胃の輪郭のゆがみや、壁の盛り上がり・くぼみを、影の濃淡から読み取る方法です。撮影は医師の指示のもとで診療放射線技師が行い、画像は医師が読影します。当日の朝は食事を控えるのが一般的です。
内視鏡検査は「粘膜を直接見て、その場で調べる」検査
カメラが粘膜のすぐ近くまで進むため、色のわずかな変化や、盛り上がりのない平らな病変も観察しやすいとされています。気になる部分はその場で組織を少し採って顕微鏡で調べる「生検」ができ、確定診断につなげられる点がバリウム検査との最も大きな違いです(結果は後日わかります)。実施できるのは医師に限られます。口から入れる経口と鼻から入れる経鼻があり、経鼻は嘔吐反射が少ないとされる一方、細いカメラのためポリープ切除などの処置には向かず、観察と生検が中心です。鼻腔の広さには個人差があり、経鼻でも鼻の痛みや違和感を覚える方はいます。検査時間は5〜10分前後が目安です(日本消化器内視鏡学会)。
どっちが楽?メリット・デメリットを比較
バリウム検査(胃部X線検査)と内視鏡検査(胃カメラ)は、体への負担のかかり方が違います。どちらが楽と感じるかは人によって異なるため、それぞれの利点と注意点を整理します。
バリウム検査のメリット・デメリット
メリットは、鎮静剤を使わないため検査後すぐに運転や仕事に戻れることです。デメリットは、X線の被ばくと、体の向きを何度も変えたり発泡剤のげっぷを我慢したりする負担です。被ばく量の目安は実効線量で3〜4mSvほどとされます(日本人間ドック・予防医療学会)。日本人が自然界から1年間に受ける放射線量は平均2.1mSv程度(環境省資料)なので、その1〜2年分にあたる計算です。検査後は下剤を飲んでバリウムを出します。便が白いのは正常な経過で、一般には水分を多めにとるよう案内されますが、水分制限のある持病がある方は事前に医師へ確認してください。下剤を飲んでも排便がない、強い腹痛やお腹の張りがある場合は、まれに腸閉塞が起こることもあるため、様子を見ずに検査を受けた医療機関へ連絡を。影に異常が見つかった場合は、内視鏡による精密検査で確認します。「要精密検査」はがんが確定したという意味ではなく、内視鏡でよく調べる段階です。
内視鏡検査のメリット・デメリット
メリットは、被ばくがないことと、気になる部分をその場で生検できることです。デメリットとして、のどの違和感や嘔吐反射があり、経鼻からの挿入や鎮静剤の使用で軽減できる場合があります。鎮静剤を使った当日は自動車の運転ができないため、公共交通機関の利用や付き添いをあらかじめ検討してください。前日の夜から食事を控えるのが一般的ですが、開始時間や水分・内服薬の扱いは施設ごとに異なるので、受診先の案内に従ってください。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、生検時の出血に配慮が必要なため、事前に申し出てください。偶発症(検査に伴う好ましくない出来事)の頻度は、日本消化器内視鏡学会の全国調査で0.044%、おおよそ2,000件に1件程度と報告されています(同学会誌2024年掲載)。
どちらが楽かは人それぞれで、げっぷの我慢や体位変換が苦手な方はバリウム検査を、のどの反射が強い方は内視鏡検査を負担に感じやすい傾向があります。
どっちがおすすめ?状況・目的別の選び方
バリウム検査(胃部X線検査)と内視鏡検査(胃カメラ)のどちらを受けるかは、公的な検診の基準と、ご自身の年齢・症状・持病から考えます。
公的な検診の基準
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(平成28年改正で胃内視鏡検査を追加)では、胃がん検診はX線検査と内視鏡検査のどちらかで行い、対象は50歳以上、間隔は2年に1回とされています(当分の間、X線検査に限り40歳代への実施や毎年の実施も認められています)。国立がん研究センターの「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2014年度版)でも、どちらの検査も胃がんによる死亡を減らす効果が報告され、推奨されています。報告されている死亡率の減少はX線検査で40〜48%、内視鏡検査では韓国の研究(40〜79歳が対象)で57%ですが、研究の対象者や方法が異なるため、数字を並べて優劣を決められるものではありません。なお、両検査を毎年交互に受けることは推奨されていません。
こんなときはどっちを選ぶか
・胃痛や体重減少、黒色便などの症状がある方は、検診ではなく早めに医療機関を受診してください
・妊娠中や妊娠の可能性がある方は、X線検査を避けるのが一般的です
・ピロリ菌の感染歴や萎縮性胃炎を指摘されたことがある方は、内視鏡検査がすすめられる場合があります
・嘔吐反射が強い方は、経鼻や鎮静剤の使用を医師に相談してみてください
・職場の健診でバリウム検査しか選べない場合でも、症状があるときや内視鏡を希望するときは、医療機関に相談する方法があります
飲み込む力が低下している方は、バリウムの誤嚥が起こりやすいとされます。持病や嚥下の状態は、事前に医師へ伝えたうえで検査方法を決めてください。費用の一例として、市区町村の胃がん検診は平成27年度の全国平均で胃部X線7,103円(うち受診者負担1,505円)、胃内視鏡14,005円(同3,116円)と報告されていますが、自己負担額は自治体によって異なり、保険診療や人間ドックの費用とも別です。実際の金額は受診先へご確認ください。
さいごに
内視鏡検査(胃カメラ)とバリウム検査(胃部X線検査)は、どちらも国の指針で胃がん検診の方法として定められ、死亡率を減らす効果が報告されている検査です。違いを一言でいえば、胃の様子を影として見るか、粘膜を直接見るかという点にあります。どちらが向いているかは、年齢や症状、持病、検査への苦手意識によって変わります。胃の不調など気になる症状がある場合は、検診の時期を待たずに早めの受診を検討してください。迷ったときは自己判断せず、医師に相談しながらご自身に合った検査方法を選びましょう。