予防接種とは
予防接種とは、感染症に対する免疫を備えたり、免疫機能を強化したりするためにワクチンを接種することです。
ワクチンを接種する個人にとっては、感染症にかかることを防いだり、重症化を抑えたりする利点があります。また、集団としては、感染症の蔓延を防ぐ他、治療にかかる医療費を抑制することも期待されます。
予防接種の種類
予防接種は、大別すると下記の2種類があります。
①定期接種
予防接種法に基づいて市区町村が主体となって実施するもの。自治体が推奨するものであり、基本的に費用は公費で賄われます(一部自己負担あり)。さらに、その推奨の意味合いから集団予防を目的とする感染症(A類疾病)と、主に個人予防を目的とする感染症(B類疾病)に分けられます。A類とB類では、接種の努力義務、自治体からの勧奨の程度が異なる他、A類は小児期に行うものが多く、B類は高齢期に行うという点で異なります。
②任意接種
ワクチン接種を希望する方が自主的に受けるもの。個人が希望するものであり、全額自己負担になります。
救済制度の違い
定期接種は自治体が主導するため、健康被害が生じた場合には、救済給付制度があります。
任意接種による健康被害は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済制度を利用します。
定期接種の種類
下記、ワクチンの種類と予防できる感染症になります。
○集団予防を目的とする感染症(A類疾病)
- Hib(ヒブ)感染症(細菌性髄膜炎、喉頭蓋炎等) - Hibワクチン
- 小児の肺炎球菌感染症(細菌性髄膜炎、敗血症、肺炎等) - 小児用肺炎球菌ワクチン
- B型肝炎 - B型肝炎ワクチン
- 感染性胃腸炎 - ロタウイルスワクチン
- ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ - 4種混合ワクチン
- 結核 - BCG
- 麻疹、風疹 - MR(麻疹風疹混合)ワクチン
- 水痘(みずぼうそう) - 水痘ワクチン
- 日本脳炎 - 日本脳炎ワクチン
- HPV感染症 - HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン
○個人予防を目的とする感染症(B類疾病)
- インフルエンザ - インフルエンザワクチン ※高齢者が対象
- 成人の肺炎球菌感染症 - 成人用肺炎球菌ワクチン ※高齢者が対象
任意接種の種類
下記、ワクチンの種類と予防できる感染症になります。
- おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) - おたふくかぜワクチン
- ジフテリア、百日咳、破傷風 - 3種混合ワクチン
- インフルエンザ - インフルエンザワクチン
- A型肝炎 - A型肝炎ウイルスワクチン
- 髄膜炎感染症 - 髄膜炎菌ワクチン
予防接種を受けるメリット
予防接種は、あらかじめ病原性を弱めたり、活性をなくしたりした病原体(ワクチン)を接種することで免疫機能を高めるものです。
予防接種のメリットは、次の通りです。
個人を感染症から守る
個人が病原体に晒された際に、感染の成立を防いだり、感染が成立した場合でも重症化を防いだりできる場合があります。
感染症の流行を防ぎ、集団、社会を守る
個人を感染症から守った先には、集団流行のリスク低減が期待されます。感染症の流行は社会に大きな影響を及ぼすため、この意義は大きなものです。例えば、感染症が流行すると治療にかかる費用を負担するために医療費がかさむ他、健康な人が減少することで社会の生産性が低下するおそれもあります。
予防接種を受けていない人を守る
免疫不全等の理由で予防接種を受けることが困難な人々もいます。あるいは、国によっては医療体制の整備が不十分な場合や、貧困のために接種できないケースもあります。集団としてみれば、予防接種が普及することで、感染症にかかる機会が減るため、こうした人々を守ることにもつながるのです。
次世代を感染症から守る
感染症によっては、母子感染のように母が感染していることで次世代に影響を及ぼすものもあります。
感染症の根絶、排除
ワクチンの接種によって感染症の拡大を防ぐことができれば、ある感染症の根絶や、特定の地域で定着していない状態(排除)にすることが期待できます。
さいごに
様々なメリットをもつ予防接種は、個人を感染症から守るのみならず、集団や社会を守ることをも目的とした重要な制度です。中には法律によって定められているものもあり、接種の意義などにより分類されています。ぜひその意義や重要性を理解した上で予防接種を受け、安全を守りましょう。