産婦人科で行われる無痛分娩とは?メリット・デメリットやリスクを徹底解説

  • 2024年7月31日
  • 2024年12月6日
  • 婦人科

無痛分娩とは

無痛分娩とは、麻酔によって分娩に伴う激しい痛みを緩和し、身体的ストレスはもちろんのこと、分娩に伴う不安感も緩和する方法です。

近年欧米を中心に普及し、日本でも徐々にではありますが増加傾向にあります。

特に初産の場合、分娩に伴う痛みはこれまで経験したことのない痛みであり、また出産に時間もかかるため、出産前から痛みに対する不安を抱く方も少なくありません。

そこで、妊婦の痛みや不安を緩和・除去することが無痛分娩の最大の目的です。

無痛分娩の方法は施設によってもさまざまですが、多くの場合は硬膜外麻酔を用います。

硬膜外麻酔とは、痛みを感じる感覚神経の根元が位置する硬膜外腔にカテーテルを挿入し、そのカテーテルから持続的に鎮痛剤を投与する麻酔方法です。

出産時に子宮が収縮したり、子宮の出口が引き伸ばされたりすると、子宮や子宮出口に分布する感覚神経によってその痛み刺激が伝達され、脊髄を経由して脳に届き痛いと感じます。

そこで、硬膜外麻酔では子宮や子宮出口の感覚神経が脊髄に流入する直前のところで局所麻酔薬を投与し、痛み刺激が脳に到達するのを遮断するわけです。

また、硬膜外麻酔を行う際には、細い針を用いて事前に皮下に局所麻酔薬を投与するため、穿刺による痛みは最低限に抑えられます。

このように、無痛分娩では通常の分娩よりも心身ともにリラックスした状態で赤ちゃんを迎え入れることができます。

無痛分娩のメリット

無痛分娩の最大のメリットは分娩に伴う痛みの緩和と、それによる精神的ストレスの軽減です。
しかし、それ以外にも下記のようなメリットがあります。

胎児への影響がほぼない

全身麻酔の場合、血管内に注入した麻酔薬の一部が胎盤を通過して胎児に移行するため、胎児への影響は避けられません。

一方で、無痛分娩に使用する局所麻酔薬は胎盤をほとんど通過しないため、胎児への影響はほぼありません。

出産の感覚は経験できる

痛みや刺激は遮断されますが、触られている感覚などの深部知覚は残存するため、お腹の張りや「自分で産んでいる」という満足感は得ることができます。

体力を温存できる

分娩による体力の消耗によってその後の離床や食事摂取が遅れることもありますが、無痛分娩では体力を温存できるため、分娩後の回復が早い傾向にあります。

緊急帝王切開にも迅速に対応できる

赤ちゃんが出てこない場合や何らかの問題が生じた場合には緊急で帝王切開に移行することもありますが、その際、硬膜外麻酔が留置されていれば、そのまま帝王切開の麻酔にも利用できる点もメリットです。

無痛分娩のデメリットとリスク

無痛分娩には多くのメリットがある一方で、下記のようなデメリットやリスクもあります。

分娩時間が遷延する可能性がある

「無痛分娩=完全に痛みを無くす」とイメージされる方も多いですが、そこまで鎮痛してしまうと投与する局所麻酔薬の影響で、陣痛やお腹のいきむ力が弱くなり、うまく赤ちゃんを押し出すことができずに分娩時間が遷延する可能性があります。

痛みを完全には取りきれない

そのため、無痛分娩といえど、あくまで痛みを緩和する「和痛」であるということを知っておきましょう。

硬膜外麻酔に伴う合併症リスクがある

硬膜外麻酔では盲目的に硬膜外腔にカテーテルを留置するため、誤って血管やくも膜下などの部位に迷入させてしまうと、局所麻酔中毒や全脊麻など、命に関わるような偶発症を招く可能性もあります。

実際には経験のある医師が全身状態を観察しながら手技を行い、トラブルがあっても適切に対処することで安全に分娩を行うことができます。

保険適用外である

無痛分娩は保険適用外であるため、事前に医療機関に費用を確認しておくと良いでしょう。

さいごに

この記事では、産婦人科における無痛分娩の概要やメリット・デメリットを解説しました。

無痛分娩は出産時における疼痛や不安を緩和できるため、出産に不安を抱いている方にとって良い選択肢の1つです。

一方で、分娩時間の遷延や思わぬ偶発症のリスクもあり、保険適用外であるため通常より医療費が高額になるなど、デメリットもあります。

そのため、無痛分娩を行うか否か、事前に家族や主治医とよく相談して納得した上で決めると良いでしょう。