リハビリの運動療法といえば、麻痺になった時やケガをした時に行われるイメージが強いかもしれません。
しかし最近では、生活習慣病や加齢に伴う身体機能の低下など、今後病気や障害の発生が予測される方にとっても運動療法が有効だと考えられています。
こちらのページでは、「運動療法の種類」「対象となる病気・症状」「運動療法を行う上での注意点」が分かるようにまとめてあります。
ぜひこの機会に、運動療法について理解を深めておきましょう。
運動療法とは
運動を行うことで、障害や病気によって起こる症状の改善・予防を図る方法を「運動療法」と呼びます。
運動療法で実施される運動には「有酸素運動」「無酸素運動」「筋力トレーニング」「ストレッチ」などが主に挙げられます。
有酸素運動
有酸素運動は、体内に取り込んだ酸素を使って行われる運動になります。
軽度〜中強度の運動を長い時間継続して行うことが、有酸素運動の特徴です。
糖質や脂質を主なエネルギー源とするため、血糖や血中脂質が下がりやすくなります。
また、心肺機能の向上や、骨粗鬆症の改善・予防にも効果を期待できるでしょう。
有酸素運動の例としては、ウォーキングやジョギング、サイクリング、エアロビクス、水泳、水中ウォーキングなどが挙げられます。
無酸素運動
無酸素運動は、酸素を使わずに行われる運動のことです。
短い時間で大きな力を発揮する、やや強度が高めの運動になります。
運動療法の効果を高めるため、有酸素運動と一緒に実施することが推奨されています。
無酸素運動の例としては、短距離のダッシュや腕立て伏せ、スクワット、ダンベル・マシンを使ったトレーニングなどが挙げられます。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、筋力アップを主な目的として行われる運動のことです。(無酸素運動の一種)
筋力トレーニングには、関節を動かさずに筋肉を収縮させる「等尺性運動」と、関節を動かして筋収縮を起こす「等張性運動」があります。
等尺性運動は、ケガや病気で関節を動かせない方でも行えますし、身体にかかる負担も少ないため、筋力や体力が低い方でも取り入れやすくなっています。
ストレッチ
ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げるために行われる運動のことです。
ストレッチには、身体を動かしながら筋肉の緊張を緩めていく「動的ストレッチ」と、ゆっくりと筋肉を伸ばしていく「静的ストレッチ」の主に2つの種類に分けられます。
運動を開始する前のウォーミングアップや、運動後のクールダウンとしてストレッチを実施する場合もあります。
運動療法の対象になる病気・症状とは
運動療法の対象となるのは、病気によって脳や脊髄、神経などが障害された「中枢疾患」の患者さん、ケガや関節の障害などで身体機能が低下した「整形疾患」の患者さんがメインとなるでしょう。
また最近では、呼吸器、循環器系など内科疾患の患者さんのリハビリや、生活習慣病の改善・予防のために運動療法が取り入れられる場面も増えています。
具体的な病気・症状は、以下のものが挙げられます。
- 脳血管障害、脳腫瘍、脊髄損傷
- 骨折・脱臼といった外傷、脊椎や脊髄の疾患
- 肺炎、気胸
- 心筋梗塞、狭心症
- 糖尿病
- 加齢に伴う筋力低下、手術後の体力低下
などです。
運動療法を行う上での注意点
急に強度の高い運動をはじめると、身体を痛める可能性があります。
これまで運動習慣がなかった方や運動が苦手な方などは、まず負担の少ない有酸素運動から始めてみましょう。
また、糖尿病の方で、薬や注射などで血糖を下げる治療を受けている場合も注意が必要です。
運動によって低血糖になる可能性がありますので、「食後に運動する」「飴玉やジュースを常備しておく」といった対策をとっておくことをおすすめしています。
その他、循環器や運動器、感染症などの病気をお持ちの方も、運動療法を行う際には、必ず医師に相談するようにしましょう。
さいごに
運動機能を回復させるためのリハビリは、症状によっては長期間に及ぶこともあります。
また、ある程度の機能が回復した後も、運動を中断すると後戻りしてしまう可能性があります。
専門家である理学療法士の意見を取り入れ、効率の良い運動療法を根気よく継続することが重要です。