認知症の方が急に怒鳴る・暴言を吐く理由
「さっきまで穏やかだったのに、急に怒鳴られた」
認知症の方を介護していると、このような場面に戸惑うことも少なくありません。「どうしてこんなに怒るの?」と感じる方も多いでしょう。しかし、その背景には認知症による脳の変化や、不安・混乱などさまざまな要因があります。まずは、怒鳴る・暴言を吐く主な理由について見ていきましょう。
脳の働きの変化で感情を抑えにくくなる
認知症では、感情をコントロールする前頭葉などの脳の働きや判断力が低下することがあります。そのため、本来なら「ここは我慢しよう」と抑えられる怒りや不満が、そのまま言葉や態度として表れやすくなります。些細な出来事でも強い怒りを感じたり、大声で怒鳴ったりすることがあるのは、このような脳の変化が影響しているためです。
不安や混乱、体調不良が背景にある
「ここはどこ?」「この人は誰?」と状況が理解できないまま話しかけられると、不安や混乱が先に立ちます。その防衛反応として怒鳴るという形で感情が表れることもあります。また、体調不良や薬の副作用、プライドが傷ついたことも、怒りの引き金になります。自分の気持ちや体の不調をうまく言葉で伝えられないもどかしさが、怒りにつながることもあります。
介護する側には突然怒鳴られたように感じますが、その言動は本人にとって、不安や混乱、つらさに対する精いっぱいの訴えである場合もあるのです。
怒鳴られたときにやってはいけないNG行動
突然怒鳴られると驚いたり、つい言い返したくなったりすることもあるでしょう。しかし、その場の対応によっては、さらに興奮を強めてしまうことがあります。本人を落ち着かせるためにも、まずは避けたい行動を知っておきましょう。
言い返す・否定する
「さっき言いましたよね」と訂正したり、大声に大声で対抗したりすると、余計に興奮させてしまいます。認知症の方にとっては、自分の記憶や認識を否定されたように感じることもあるためです。事実が間違っていても、その場で無理に訂正しようとせず、まずは本人の気持ちを受け止めましょう。
無理に説得する・叱る
興奮しているときは、相手の言葉を受け止めにくい状態です。「落ち着いてください」と繰り返したり、子どもを叱るような口調になったりすると、かえってプライドを傷つけ、興奮が長引く原因になります。また、興奮しているからといって無理に体を押さえつけると、本人の不安や恐怖を強めてしまうことがあります。身の危険を感じる場合は無理に対応を続けず、距離を置いて安全を確保しましょう。
暴言・癇癪に対する関わり方
認知症の方が怒鳴ったり暴言を吐いたりしたときは、言動を無理に止めようとするのではなく、安心できる環境を整えることが大切です。まずは本人の気持ちに寄り添い、興奮を落ち着かせることを意識しましょう。
落ち着いて気持ちを受け止める
怒鳴られても感情的にならず、穏やかな声で接することが大切です。ただし、興奮が強い場合は、無理に話を続けようとせず、少し時間を置いてから改めて声をかけることも大切です。「嫌だったんですね」「不安だったんですね」と気持ちに寄り添う言葉をかけることで、安心感につながる場合があります。内容の正しさを議論するのではなく、まずは本人の気持ちを受け止めることを意識しましょう。話題や場所を変えて気をそらしたり、好きなことへ意識を向けてもらったりするのも効果的です。
原因を探り、一人で抱え込まない
怒鳴る背景には、空腹や痛み、眠気、トイレに行きたいなどの体調不良や、不安を感じる環境が隠れていることもあります。何がきっかけだったのかを振り返ることで、同じ状況を防げる場合があります。対応が難しいと感じたときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談しましょう。
さいごに
認知症の方の怒鳴り声は、決して「性格」や「わがまま」ではなく、脳の変化や本人なりの不安のサインです。ただ、日々向き合うご家族や介護者にとっては、心身ともに負担が大きいのも事実です。一人で抱え込まず、必要に応じて周囲や専門家の力も借りながら、無理のない介護を続けていきましょう。