実は「実数」ではなく「見つかる数」が増えた!?
発達障害(ADHD、ASD、LDなど)と診断される方が増えたのは、障害を持つ方の実数が増加したのではなく、これまで見過ごされてきた特性が見つかりやすくなったためと考えられます。
主な理由は以下の2つです。
①診断基準や定義の拡大
発達障害と診断される方の増加には、精神疾患の診断基準と分類をまとめた国際的なマニュアルであるDSMなどの診断基準の改定が関係しています。とくにDSM-5では、以前は重度なケースに限られていた診断の枠が広がり、自閉症スペクトラム障害という概念が導入されました。これまでなら「性格の範囲内」や「少し変わった性格」と片付けられていた軽度・境界域の特性も適切に診断されるようになりました。診断の枠組みが変わったことにより、これまで見過ごされていた方たちも支援や医療の対象として認識されやすくなったことが、増加の要因と考えられています。
②社会的な認知度の上昇と早期発見
近年、メディアやインターネットの普及により発達障害に関する情報が広く知られるようになりました。それにより発達障害への関心が高まり、本人や家族、教育現場が早い段階で違和感に気づき、専門機関で相談する方や医療機関を受診する方が増えて、診断件数が増加したと考えられます。
なぜ昔より目立つようになった?現代社会で求められる「得意・苦手」の変化
発達障害が昔より目立つようになったのは、診断基準の拡大や認知度の上昇に加えて、集団への適応を重視する日本社会や現代社会が求めるスピード・処理能力のレベルが高度化していることも関係しています。
日本社会は、昔から集団の中で協調性が重視される傾向が強く、組織の枠に収まることが求められるケースが多いと言われています。発達障害のある方は学校や会社など集団の中で適応しづらく、集団の中で目立ってしまい生きづらさを感じることがあります。
また現代の学校や職場では、臨機応変なコミュニケーション、複数の作業を同時に進めるマルチタスク、複雑な情報処理が求められるようになっています。こうした要求水準の高まりにより、以前なら見過ごされていた特性が生活上の困りごとや課題として認識されるようになったことも、発達障害の方が目立つ理由の一つと考えられます。
「可視化」が進むことで得られるメリット
以上のように、最近は以前に比べて早期に発達障害と診断されることが多くなっています。それにより本人や周囲の理解が深まり、適切な配慮や支援を受けやすくなり、当事者・家族と社会の両面でメリットがあると考えられます。
当事者・家族のメリットとしては、発達障害が「本人の性格や努力不足」や「親の育て方」によるものではなく「特性」だとわかることで生きづらさを軽減できます。また本人の得意・不得意を認識することで対処法を見つけやすくなったり、適切なサポートを受けやすくなったりします。
社会のメリットとしては、特性に対する理解が深まることで、個々の違いを受け入れる環境が作られると考えられます。学校や職場で「何をどう手助けすればいいか」といった具体的な配慮や対策ができるようになります。また特性を「強み」として活かせる業務への配置や、能力を発揮しやすい環境づくり(凸凹を活かしたチーム編成)が可能になります。
一方で、可視化が進むことのデメリットとしては、「安易なラベル貼り(レッテル貼り)」や「就職・保険加入での差別(データの悪用)」といったリスクも懸念されています。メリットを最大限活かすためには、データの取り扱いや倫理的なガイドラインの整備も同時に進める必要があります。
さいごに
発達障害と診断される方が増えているのは、障害を持つ方の実数が急増したのではなく、診断基準の拡大や社会全体の認知度の向上、支援体制の整備により「発見されやすくなった」ためと言えます。
発達障害を持つ方への理解と支援は、教育や医療の現場だけでなく、社会全体で共有されることが求められます。そのためには家庭や職場、地域などさまざまな場面で、特性に配慮した環境づくりが重要になります。