それは本当に「急激」? 一時的な視力低下との違い
視力低下には、何年もかけて徐々に下がる場合と、突然下がる場合があります。まずは原因が「一時的」か「治療が必要」かを見極めるポイントを知っておきましょう。
一時的な視力低下の主な原因
目を休ませることで回復する場合、多くは「目の疲れ(眼精疲労)」や「目の乾き(ドライアイ)」が原因です。
スマホ等の長時間使用でピント調節筋が凝り固まったり、目が乾いて涙の層が乱れたりすると、一時的に見えにくくなります。「夕方になると見えづらい」「まばたきをすると一時的によく見える」といった場合は、この可能性が高いでしょう。
注意が必要な「急激な」視力低下
病気が疑われる危険なサインもあります。「片目だけ急に見えにくくなった」場合は要注意です。片目ずつ隠してチェックしたときに見え方が大きく違うなら、何らかのトラブルが起きている証拠です。「視野の上半分が見えない」といった視野の欠けがある場合や、一晩寝ても回復しない場合は、すぐに眼科を受診する必要があります。
緊急!「急激な視力低下」で疑われる危険な目の病気
急激に視力が低下した場合、目の奥で重大なトラブルが起きている可能性があります。ここでは、代表的な病気を紹介します。
網膜剥離
目の奥にある「網膜」という、カメラでいうフィルムの役割をする膜が剥がれてしまう病気です。
前触れとして、目の前に黒い点や糸くずのようなものが急に増えて見える(飛蚊症)ことや、暗い場所で光がピカピカ見える(光視症)ことがあります。進行すると、視野の端からカーテンが下りてくるように見えなくなっていきます。
放置すると失明の危険があり、緊急手術が必要になることも多い病気です。
眼底出血(硝子体出血など)
目の奥の血管が切れて出血し、目の中(硝子体)に血が溜まって光を遮ってしまう状態です。
突然、目の前に墨を流したような黒い影が現れたり、霧がかかったように全体がかすんで見えたりします。糖尿病や高血圧の持病がある方に起こりやすい傾向があります。
急性緑内障発作
目の中を満たしている液体の循環が急に滞り、眼圧(目の硬さ)が急激に上昇する状態です。急激な視力低下に加え、「激しい目の痛み」や「頭痛」、「吐き気」を伴うのが特徴です。
目が真っ赤に充血することもあります。緊急性が高い状態で、治療が遅れると回復が難しい重い視力障害が残ってしまう可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
網膜の血管が詰まる病気(網膜動脈閉塞症など)
目の奥の血管が突然詰まってしまう、いわば「目の脳梗塞」のような状態です。
痛みは全くないのに、突然スイッチが切れたように片目が真っ暗になって見えなくなることがあります。動脈が詰まった場合は、発症からなるべく早く治療を開始することが重要です。時間が経つほど視力の回復が難しくなってしまうため、一刻を争う緊急の病気といえます。
急激な視力低下を感じた時の対処法
「急に見えにくくなった」と感じたら、様子を見ずにすぐに行動してください。
ためらわずに眼科を受診する
重要なのは、できるだけ早く眼科を受診することです。「一晩寝れば治るかも」「忙しいから週末に行こう」という自己判断は危険です。
発症から数時間〜数日の対応の遅れが、一生の視力に関わってしまうこともあります。視野が欠けている、痛みがある、全く見えないといった強い症状がある場合は、すぐに救急対応ができる病院を探しましょう。
受診するまでに気をつけること
見えにくい状態で無理に目を使ったり、こすったりするのはやめましょう。できるだけ目を閉じて安静にし、すぐに病院へ向かってください。
その際、視力が低下した状態での車の運転は大変危険ですので、絶対にやめましょう。家族に送ってもらうか、タクシーなどを利用してください。
医師には「いつから」「どんな風に見えにくくなったか」「痛みはあるか」を正確に伝えると、スムーズな診断につながります。
さいごに
急激な視力低下は、目からの緊急SOSサインです。単なる疲れ目だろうと軽く考えず、「いつもと違う見えにくさ」を感じたら、すぐに眼科を受診してください。早期発見と早期治療が、あなたの大切な視界を守る唯一の方法です。